備長炭
備長炭馬目樫(ウバメガシ)を原料に製炭される白炭の一種で、元禄元年、紀州の田辺市秋津川村でその製法が完成され、備中屋長左衛門により全国に広められたと伝えられています。非常に硬質で、断面には光沢があり、たたくと金属のような響きを奏でます。火つき・火持ちがよく、また、「やきもの」のような美しさにより、茶の湯炭と並び日本の炭の最高傑作と評されています。
 
主な産地
原木となる馬目樫の群生する紀州(和歌山)を発祥として、同緯度の同じような気候条件の土佐(高知)、日向(宮崎)が主な産地です。その中でも発祥地である和歌山の備長炭は、紀州備長炭と呼ばれ最高級品とされています。
 
用途
燃料としては、炎が出ないために焼き物料理に優れています。鰻を焼くのに備長炭を用いると鰻の臭みが消え、ふんわりと焼きあがるため今も備長炭にこだわる鰻屋さんが数多くいます。また焼き鳥屋や焼肉屋でも備長炭はかなり使用されています。
近年、備長炭は燃料としてだけではなく、湿気取りとして床材や壁材として使用されたり、浄化材として製品化されたりするなど、様々な用途が研究されています。
見た目もきれいなため、置いておくだけで飾りになります。
 
備長炭の特長
備長炭は通常の木炭と違い、硬質で火持ちが良いのが特長です。また、炎が上がらないのも特長です。
 
備長炭の現況
現在、杉・檜の植林のために備長炭の原料となるウバメガシが激減しています。石油・ガス・電気によるエネルギー革命によって木炭は無用の長物とされ、杉や檜が高く売れるといってウバメガシの原生林を次々と杉・檜への植林地にかえた結果、日本の生み出した高品質の備長炭が危機的な状況に陥りました。しかし、近年備長炭の良さが再認識され、産地ではウバメガシの植林を行おうとする動きもでてきています。
 
エコロジー性
日本では備長炭を含む木炭は最盛期には年間200万トン(国民一人あたり年間15kg)を消費していました。しかし、これだけの消費をしていたにもかかわらず、製炭のための伐採により山がはげるということはありませんでした。これは伐採した木を製炭して燃料として使用し、燃焼によって発生した炭酸ガスと太陽のエネルギーで光合成が行われ、再び木が繁るという完全なリサイクルが行われている結果です。適度に使用する限り、木炭は無限のエネルギーといえます。
 
備長炭の性質
  樹種と性状 備考
樹 種 馬目樫(ウバメガシ)  
炭 種 白炭  
硬 度 20度 硬度は三浦式木炭光度計による
比 重 1.80〜1.85  
水 分 9.7〜10.9%  
灰 分 1.60〜3.70%  
揮発分 8.70〜9.80%  
着火点 484〜521℃  
C(炭素) 91.44〜96.26%  
H(水素) 0.09〜0.83%  
O(酸素) 2.17〜3.33%  
*硬度20度は鋼鉄に匹敵する

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